『踏まない、回すペダリング』とは
雑誌やネット記事でよく見るフレーズ
『踏まないで回すペダリング』
このフレーズ、誰もが一度は見たことがあるんじゃないかと思います。初心者の人には間違いなく魅力的に見えますね。僕もそうでしたw
内容としては踏まない、脱力して軽く回す、腿を(引き足)を上げる、1時に入力するだけ、足を前に出すと言った感じ言葉が並んでる事が多いです。
記事の内容に沿ってやってみたら
踏まない→ 当然ペダルに荷重が掛からないので進まない。
軽く回す→荷重が掛かってないのでケイデンスを上げた所でさほど進まないしケイデンスの維持がキツイ。
腿を上げる、1時に入力、足を前にだす→普段使わない筋肉を使い長い時間維持出来ないし進まない。
まぁ、こんな感じになりました。
初心者が記事を見てやってみた結論
「全く分からん、無理」
この一言です。
踏まないで回すだけで30km巡航余裕です♪とかホントなのかよ?パワートレーニングで高い出力が楽に維持出来てるだけなんじゃねーの?ってのが正直な気持ちでした。
1年やって分かった『踏まない、回すペダリング』
荷重を感じるようになってから
2年程前にお師匠から荷重の感じ方を教えて貰いました。
「荷重は足の爪先で感じる」
この一言で今どれ位の荷重が掛かっているのか分かるようになり、それ以来『踏まないペダリング』を続けてきました。
色々と試行錯誤しながら、何が問題なのか?どうしたらいいのか?と考えながら、ひたすら1年間やり続けたら
「踏まない、回すペダリングとはこういう事だったのか!!」
とある程度理解出来るようになりました。
言ってることは間違いじゃなかったけど・・・
そして腿を(引き足)を上げる、1時に入力するだけ、足を前に出すと言った事も正しかったんだな~と理解。
同時に伝える側と読み取る側とのニュアンスが全然違う感じになるのも分かりました。
例えば腿を上げるのは、踏み側を邪魔しないのと腿を引き上げるような意識をする(程度で)と引き上げた反作用で反対の踏み足側が勝手に落ちるようになるんだけど、僕ら初心者だと引き足側でも回転力(トルク)を稼ぐのにペダルを持ち上げるんだと思ってしまい、伝える側が思ってる10倍位の力で引き上げて直ぐにヘロヘロになってしまうと言った感じ。
足を前に出すのも12時をスムーズに流して3時までの荷重を極力ロスが無いように、クランクの円運動に対し接線方向に回すため。
1時の入力も極力少ない入力でパワーを得るため。
と言った事が1年経ってようやく分かりました。そりゃ1年前の初心者ワイ君には分からんわ・・・
やってみて思ったのが、どれも全部先ずはニュートラルに回せるようになってから、次のステップでやった方がいいんじゃないの?って思いました。1時の入力なんか2年経った今でも練習してますが僕には凄く難しいです。
上級者が言っている事が初心者には伝わらない
「上手い人が言っている事が初心者にはよ~わからん」
ってのが分かったので、万年初心者レベルの貧脚おっさんがやっみて分かった事を初心者ならではの目線で解説してみようと思います。
まずは座学的なことから
パワーの計算式
簡単な座学からスタートします。色々厳密に言うと違う箇所あるけど分かりやすくするために端折ってます。
パワー = トルク ✕ 回転数
パワーはトルクと回転数を掛けたものでトルクはペダルに掛かる荷重と思ってください。回転数は単純にケイデンスですね。
つまり、ペダルに荷重を掛けてケイデンスを上げればパワーが出る。
当たり前ですね(笑
『踏まないで回して』どうやってパワーを出す?
僕ら初心者だとパワーを出すにはまず間違いなく大なり小なりペダルを踏んでトルクを出し(荷重を掛ける)ます。踏まないとペダルに荷重は掛かりません。
ならどうやって『踏まないで』ペダルに荷重を掛けるの?というと体の重さを使って荷重を掛けるんですね。体の重さを使えば全く踏まなくてもトルクを掛ける事が出来る訳です。
『回す』は回転数(ケイデンス)の事と思われがちですがケイデンスじゃなくて如何に無駄なくスムーズに『回す』かの事です。なのでケイデンス50回転だろうが100回転でも一緒です。
初心者だとペダルに100の荷重を掛けたとしてもペダルを回すロスが大きくて実際には30の荷重しか掛かってないような感じだと思って下さい。これを極力100に近づけるように如何に無駄を削ぎ落として綺麗に『回す』事と思って下さい。
両方出来れるようになれば、後は体の重さで荷重を掛けて回しケイデンスを上げるだけで簡単にパワーが得らる。
これが『踏まないで回すペダリング』の正体だったんですね。
言うのは簡単だけどやるのは難しい!
『踏まないで回すペダリング』の正体ですってサクッと言ったけれど、出来るようになるまでに気をつけないといけない箇所が沢山あるので結構難しい。
やって思ったのは複数箇所を同時に気にしながらやるのは「俺には絶対無理!」と思いました。なので気長に一つずつ順番にマスターしながらやったら出来るようになりました。多少時間は掛かったけれど結果的にこれが正解だったなーと思ってます。
なので一つずつ順番にやり方を紹介していこうと思います。先ずは『踏まない』練習から、その後に『回す』練習方法を紹介する予定です。
一つずつにすれば特に難しい事は無いです。ただし感覚を掴むのに時間は掛かると思います。メッチャ不器用だった僕が出来るレベルなので多分誰でも簡単にマスター出来ると思います。
何故『踏まない』からなのか
僕ら初心者がパワーを出そうとペダルを踏むと、縦方向に踏むので下の図のような荷重の掛かりかたになります。踏もうとするとどうしても無意識に6時まで踏み抜いてしまうんですね。
色々試行錯誤してて気づいてきたんですが、コレがまぁ色々マズイ訳です。その中でも特に良くないのが下死点近辺の5~7時の入力です。5時は殆どペダルを回す力になってなく、6,7時に至っては1mmもペダルを回す事も無く、力一杯地面を踏んでるだけ。では済まず反対側の足が荷重するのを邪魔までしている始末。
これを改善するのは『回す』練習なんですがコレがメッチャ難しい。色々やってて『踏まない』為に体の重さを使う練習をしていたら知らん間に改善されて一粒で二度美味しい状態だったのが理由の一つ。
もう一つは『パワー=トルク✕回転』でトルクが掛けられない状態で回してもパワーが出ず上達しているのか分からないのと、『回す』練習の最後の段階でかなり微妙な荷重の掛け方をマスターしておいた方が良いのが『踏まない』を先にやるメインの理由です。
『踏まない』練習方法 荷重の掛け方
どこで荷重を感じる?
それではメインの『踏まない』で荷重を掛ける練習です。
最初は一番大事な『荷重を感じる』事。最初にチョロっと書きましたが荷重は足の爪先で感じます。
このあたり。このつま先裏に感じる圧=荷重になります。
まず始めに荷重を感じてみる
まず椅子を用意して浅めに座って下さい。足は踵が少し浮く位の位置にして貰って、
この状態で椅子にデン!と体重を掛けて脱力すると上半身の重さはおしりに掛かってます。そして足の重さがつま先に掛かります。このつま先の足裏の感覚が足の重さのみを荷重している状態です。
続いて体をほんの少しだけ前に傾けると、足裏に掛かる圧がグッと上がったと思います。
コレが上半身の重さを少しだけ掛けた状態です。コレだけでもソコソコ荷重が掛かっているので回すと相当のパワーになります。
ここまで傾けるとメチャメチャ荷重が掛かっているのが分かるかと思います。
コレくらい荷重が掛かっていると僕の体重(60後半kg)だとケイデンス100も回せば余裕で300w超えます。床の上なので体重を支えるのに腿にもソコソコの負荷が掛かりますが、自転車でするとペダルが勝手に下がって逃げていくのでそれ程腿には負荷はありません。初心者ワイ君がアホみたいに頑張って踏み込むより大きな荷重がたったコレだけで出せるんです。
結構簡単に荷重の変化を感じられたでしょ?
乗車中の荷重の掛け方
続いて実際に乗っている時にどうやって荷重していくか?
まずハンドルとサドルにガッツリと体重をのせて乗車します。
上半身の荷重から。
上半身の重さはハンドル、お尻の重さはサドル、足の重さはペダルに掛かります。ハンドル、サドルには赤矢印のように荷重が掛かってます。
この状態からハンドルへの荷重を抜いていきます。手を黄色矢印の方向にホンの少しだけ引くと体が前に倒れそうになると思いますが体の角度はそのまま(超重要!)で足と体幹で支えて下さい。するとハンドルへの荷重が抜け、その分の上半身の重さが足に加わって荷重されたのが分かるかと思います。
手に掛かけていたハンドルへの荷重を抜いた分だけ(手を引く程)足に荷重が加わります。手放しになるとハンドルに掛かってた荷重が全て足に掛かった状態になります。またより前傾姿勢になる程、より大きな荷重を掛けれるようになります。
続いてお尻の重さ。お尻の重さは簡単でサドルからお尻を浮かすだけです。お尻をサドルからホンの少し浮かし(1mm位のイメージで十分)サドルへの重さを抜くとペダルに荷重が移るのが分かると思います。おしりをガッツリ浮かして足に沢山荷重を掛けてペダリングするのは案外難しいので暫くの間は少しだけにしといた方が良いです。凸凹した路面の荒れたところを走る時にホンの少し(極小で十分!)だけサドルの荷重を抜くだけで衝撃が激減しかなり快適に走れるようになります。
ライド中は結構こまめに手の荷重、前傾姿勢の角度、お尻の浮かし方を変えながら掛ける荷重を調整し走ってます。
荷重をペダルへの乗せる
続いて上半身やお尻の荷重をペダルに乗せる練習。コレは難しくは無いですが、出来るようになるまで時間が掛かると思います。ただ、やればやる程上手く楽に走れるようになるので沢山やって欲しいです。めちゃくちゃ重要なポイントです。
イメージとしては極端にいうと立ち漕ぎ。
ペダルに体重を乗せて待つ→ペダルが6時まで落ちたら反対側の足に体重を乗せるの繰り返しです。
足が12時のタイミングで右、左と体重移動を繰り返すだけです。
そしてやってメチャメチャ効果があったのが、『重いギアでゆっくり回す』です。びっくりする位上手くなってるのが体感出来ました。是非やってみて欲しいです。
この練習は慣れるまでは上半身の重さだけでやった方がやり易かったです。
信号待ち等の停止状態から7,8速あたりからスタートし体重を乗せるだけで超ゆっくりと加速していきます。速度が上がってきたらシフトアップし50~70回転あたりでひたすら体重を乗せる事を意識して走るだけです。ケイデンスはなるべく低めの回しやすい回転で。僕は50~60回転位(60回転近辺が多かった)でやってました。
ペダルを回すのにそれなりに荷重が必要なので筋力で踏むと持続出来ません。無駄な荷重をしているとペダルが回らないので5~7時あたりの無駄踏みが無くなってきます。そして体を支えるに必要な体幹が鍛えられます。ほんとにメチャメチャ効果のある練習なので是非。
これを暫く続けていたら3%位までの坂がホンの少しだけ荷重を増やすだけで平地を走っている感覚のままで全く気にならなくなりました。向かい風も同様です。さらに続けてくと6,7%位の坂でも体重だけで登れるようになって「1時間でも2時間でも登れるわい」みたいな感じになり山がそれ程キツく無く登れるようになりました。以前はヒルクライムは大嫌いだったんですが今はかなり平気になりました。
まとめ
『踏まないで回す』ペダリングの『踏まない』は
- ハンドル、サドルへの荷重を抜く
- 体の角度はそのまま
- タイミング良く左右の脚に体重移動
これだけです。3が慣れるのに少し時間が掛かる位で全然難しくないです。
荷重が掛けれるようになってペダリングも改善されて良い事ずくめなのでガンガン練習してマスターして下さい。
次は『回す』編です。暫く先の話になると思いますが、乞うご期待!?(笑)